コラム
失敗談から学ぶ「満足感する旅行」とは?高いホテルというだけではダメ
旅行の失敗談
今から約8年半前の2009年のゴールデンウィーク。私たちは自分たちの新婚旅行(2008年)で出掛けたリゾートアイランド・モルディブに感動し、もう一度あの楽園で、今度はもっと贅沢な旅がしたいと、(自分たちにとっては)かなり豪盛なモルディブ旅行を計画し、実行したことがある。旅程での移動はすべてビジネスクラス、そして宿泊先のリゾートでは12日間の滞在、しかも全泊水上コテージという、、、ちょっとでもお得に旅しようとする今の私たちの旅行スタイルとはかけ離れた、びっくりするような内容の旅行であった。しかし、そんな豪華な旅行をしたのにもかかわらず、実はそれほど満足できるような体験ができなかったのだ。。。その一見豪華に見える旅行が、なぜそこまで満足のいくものではなかったのか。その失敗体験をもとに、私達の考える「心に残る旅行計画」の立て方のヒントを、このコラムに書き残しておきたい。
憧れの水上コテージ
その失敗体験となるモルジブ旅行に行く1年前。私たちは新婚旅行で、インド洋に浮かぶ1島1リゾートの楽園モルジブに訪れた。場所は、モルディブの首都マーレから水上飛行機で約1時間北に進んだ場所にある、ラヴィアニ環礁のリゾート「Kuredu Island Resort - クレドゥアイランドリゾート」。そんなに予算も無かった私たちは、そこで一番リーズナブルなバンガローに泊まり、そのリゾートで簡単なビーチウェディングも行った。海は透き通る青と水色のコントラストで、海の中には熱帯魚やカメなどがたくさん。地上では約1kmほどの長さの「サングビーチ」にゆっくりと波が押し寄せ、セレブな欧米人達はカクテルを片手にその楽園の風景を思い思いに楽しんでいる。私達が泊っているバンガローは二人で朝夕2食付きで約2万円の格安のお部屋。そのため、そんなセレブたちの集まるバーやビーチへは入ることができなかったのだw そう、このクレドゥリゾートでは、宿泊している部屋ごとにランクがあり、小さな島の中でもすみ分けが行なわれていたのだ。そんな私達が入ることを許されない場所を羨ましながら眺め、いつかはあちら側へと行きたい、そう強く願った。
充実したリゾートライフ
だが、その時の滞在自体はすごく充実したもので、今でもビーチリゾートを計画したりするときに、常に頭のなかに蘇ってくる良い思い出になっている。自分たちの部屋がすごくリーズナブルなのも知っていたので、少し設備が悪かったとしても、それはそれで楽しめたし、またそんなに期待していない分、良いことがあると素直に嬉しく思った。その時の一番のハイライトは、ビーチレストランでの食事。ウェディングプランに入っていたビーチレストランで波音を聴きながらのディナーだったのだが、私達が食事をしているちょうどその時、そのレストランの砂浜でウミガメの子供が卵から孵化し、一生懸命海に向かって歩いてゆく姿を眺めることも出来たのだ。本当にアメージングな新婚旅行だった。でももっとお金を出せば、もっと良い滞在が出来るんじゃないか?当時の私たちはそう信じて疑わず、次の年のゴールデンウィークには再びモルジブへの旅行を計画した。そして今度はもっとゴージャスなものにしたいと強く思い、予算は最初の新婚旅行よりもかなり高いものとなったのは、想像に難しくない。
宿泊費だけで80万円超え
そして2009年のゴールデンウィークが訪れた。行き先は新婚旅行でのリゾート「クレドゥ・リゾート」と同じ会社が経営する、一回り宿泊費用が高いハイソなリゾート「コマンドゥー・アイランド・リゾート」だ。そのリゾートにもビーチバンガローから水上コテージまで数種類のお部屋が存在しているのだが、私達がこの時宿泊したのは、そのリゾートで一番上のランクの「水上コテージ」だった。宿泊費は3食付いて1泊約6.7万円。もちろんモルジブにはもっと高いリゾートは幾らでもあるが、私達にとってはこの一泊6.6万円というのはかなり高い、いやとんでもなく高いお部屋。だからこそ、それだけ期待も高まるし、そこでの宿泊は、新婚旅行の時よりもアメージングになる、、、そう信じて疑わなかった。
期待しすぎた楽園
そうして12泊の滞在が始まった。最初は浮かれていた部分もあってあまり回りが見えていなかったが、滞在日数を重ねるうちに、例えば部屋の冷蔵庫が壊れかけていたり、スタッフの対応も微妙な場面があったり、透き通った海に近所の村から流れてくるゴミに幻滅したり、、、期待しすぎる分、ちょっとでもネガティブな場面を見ると、過剰に反応してしまうのだ。
リゾートの桟橋から見る海では、なんとイルカがジャンプしていたり、シュノーケルで海に潜れば海ガメにも簡単に会えるし、さらにマンタも出現したりもする。そんなとんでもない非日常的な場所にいるにもかかわらず、そんなことは目に入らず、さっき体験した自分たちの期待にそぐわない場面に対して、不平不満をこぼしまくってしまうのだ。
新婚旅行と何が違うのか
その2つのモルジブ旅行から、そろそろ10年近くの月日が過ぎようとしている。私達の中で輝きを失わずに未だにキラキラしている思い出は、やはり新婚旅行の時のモルディブ旅行なのだ。では、一体、新婚旅行と、次の年のゴージャス旅行は何が違うのか、考えてみた。それは「こうあるべき」という決め付けや思い込みがあるかどうかという違いだ。この2つの旅行を隔てているのはそれだけ。ゴージャス旅行だって、非現実的な場面にいくつも遭遇したし、もしかしたら新婚旅行の時よりもスゴい風景をみていたかもしれない。でも、自分の中にある期待と思い込みが、旅行を見る目にフィルターを掛けてしまい、素直に感動したりすることができなくなってしまっていたのだ。
旅行は自分の心が感じる体験そのもの
人というのは、無理をして買ったりしたものに対しては、色んな満足感などを期待してしまう。私達も結構無理をして80万円を工面し、そのゴージャス旅行を実行した。その分、最低このぐらいは無いと、、、という期待値が高くなりすぎてしまったのだ。そうなることで、素直に感動する気持ちも無くなってしまい、自分たちの理想が目の前に現れるのを期待ばかりしてしまったのだ。払ったものに対する見返りを求める気持ち。これは、旅行で起こった素晴らしい体験を霞めてしまう、とても宜しくない感情だ。旅行で何かが起こった時、自分が立っている場所によって、その体験は180度姿を変える。例えばホテルのスタッフが親切で優しいとする。でも張り切って無理してお金を出した人にとっては、そんなことは当たり前。でも無理しない予算で取ったホテルだったら、その親切さに素直に「ありがとう」と思えるし、感謝する。そう、旅行体験とは、自分の心が自分のフィルターを通して感じる体験なのだ。
心に残る旅行を体験するために
忘れられない素晴らしい旅行体験をするために大事なこと。それは「変な期待をしない旅行計画を立てること」だ。無理をした予算での旅行というのは、その計画の時点で期待してしまうし、いくら気をつけた所で、「無理をした」という思いが、旅行に対する期待を高めてしまう。よく、ネットなどでのホテルレビューで、高級ホテルになればなるほど、コメントを残している人の意見が厳しいということに気がついたことはないだろうか。これはまさに、自分の期待度の高さが招いた悲劇だ。「こんなに支払ったのに」という思いが、何気ないスタッフの対応を、最低のものとして受け取らせてしまう。これがもし自分にとって「むっちゃお得なホテル」だったら、多少のスタッフの不手際などがあっても全然気にならない、もしくは許せてしまう。
この2009年の満足できなかったゴージャス旅行で、私達が学んだことは「無理をして背伸びをしないこと」だ。ホテルを選ぶ時も、リーズナブルで、でもちょっとよさ気な場所を吟味する。そうすることで、その旅行に対して変な期待をすることもないし、旅行で起こった思いがけない体験に素直に感動することができるようになる。背伸びをした時に心に持つ「期待」というのは「欲望」にほかならない。
しかし、旅行が持つ最大の魅力というのは「思いがけない感動」だ。自分が思い描く推測の域を超える体験を得るためには、まずその自分の中にある期待や欲望を捨ててしまうことだ。期待値の高いフィルターを通して見る世界と、等身大の素直な気持ちのまま見る世界とでは全く同じものを見たとしても受け取り方は全然違う。変な期待や欲望を捨ててしまえば、、、きっと一つ一つの旅行が忘れられない思い出になってゆくはずだ。
最新の記事
人気の記事